AIと会話しながら自動会計システムを作ってみた話
はじめに
このコラムは、プログラミングを専門的に学んだことのない行政書士が、「バイブコーディング」(AIと会話しながらプログラムを少しずつ作り上げていく手法)に挑戦した体験記です。当事務所の実際の取り組みとして、ありのままにご紹介します。より良いやり方もあるかと思いますので、ひとつの参考事例としてお読みいただければ幸いです。
今回挑戦したのは、当事務所の会計業務——つまり、わたし自身の事務所の経理——の自動化・効率化です。具体的には、数百枚にのぼるレシートを一枚ずつ手作業で現金出納帳に転記する、という地味で時間のかかる作業を、AIに任せられないかという試みでした。お客様からお預かりした情報を扱うものではなく、あくまで当事務所自身の経理にかぎった取り組みである点を、最初にお伝えしておきます。
使ったもの
特別な道具はほとんど使っていません。
- レシートの読み取り:ScanSnap(スキャナー)
- プログラミング言語:Python
- 開発環境:VSCode
- 会計ソフト:弥生会計(以前から使っていたもの)
- レシートを読み取って判断するAI:Vertex AI のAPI
AIに Vertex AI を選んだのには理由があります。Googleが提供するサービスで、企業の大切なデータの取り扱いが非常に堅牢とされているためです。行政書士は情報を預かる仕事ですので、ここは特にこだわった点です。
そして、プログラムを実際に書く相棒として使ったのが、対話型AIの「Claude(クロード)」です。私が「こういうことをしたい」と日本語で話しかけると、Claude がそれをプログラムの形にしてくれる——これがバイブコーディングです。当事務所では現在、この業務効率化の取り組みを Claude に一本化して進めています。
仕組みの流れ
実際の流れは、下の図のとおりです。
- ScanSnap でレシートをスキャンし、所定のフォルダに保存する
- VSCode から Python のプログラムを実行する
- Vertex AI がレシートの画像を読み取り、日付・金額・店舗名・勘定科目を自動で判断する
- 結果が、ブラウザで確認できるレポートと、Excelで修正できるファイルとして出力される
- 内容を確認・修正したうえで、弥生会計に取り込む
文章にすると難しそうに感じるかもしれませんが、やっていること自体はシンプルです。「スキャンして、ボタンを押すと、仕訳の下書きができあがる」。基本はそれだけです。
作るまでには、それなりの手間がかかります
正直にお伝えすると、ボタンひとつで一瞬にできあがった、というわけではありません。
この仕組みをAIに作ってもらうには、まず当事務所のこれまでの会計資料——過去の仕訳や、勘定科目の付け方など——をAIに渡す必要がありました。この「お手本」となる資料は、量が多く、そして正確であるほど、AIの判断の精度が上がっていくように感じます。自分の事務所のやり方を、いったんAIに教え込むイメージです。
また、一度の指示で完成するものでもありませんでした。「ここはこう直してほしい」「この科目はこう分類したい」と、AIと何度も会話を重ねていく、それなりに根気のいるやり取りが続きます。とはいえ、難しい専門用語を覚える必要はなく、あくまで日本語での会話の積み重ねです。手をかけた分だけ、自分の事務所にぴったり合った仕組みに育っていきます。
使うほど賢くなる
おもしろいのは、修正した内容がAIの学習データとして蓄積されていく点です。最初は判断を間違えることもありますが、こちらが直した内容を覚えていくので、使えば使うほど精度が上がっていきます。手をかけて育てていく感覚に近いかもしれません。
やってみて感じたこと
いちばん大きな発見は、「紙で管理している転記作業は、かなりの部分をAIに任せられる」ということでした。
これはレシートに限った話ではありません。請求書、納品書、申請書類、台帳——手で書き写しているものを、一度思い浮かべてみてください。その多くは、同じ仕組みで自動化できる可能性があります。そして、ひとつ自動化に成功すると、不思議と「だったら、あれもできるのでは」「これも任せられるのでは」とアイデアが次々に広がっていきます。小さな成功体験が、次の挑戦の燃料になるのです。
以前なら、こうした仕組みを専門業者に頼むと数十万円かかったかもしれません。それが、プログラミングの専門知識がなくても、自分の手で作れてしまいました。(マネーフォワードのような優れた会計サービスもありますので、手軽さや正確さを優先される方にはそちらも良い選択肢です。)
もちろん、こうした仕組みを業務に使う際は、情報の取り扱いに十分な注意が必要です。
iPhoneは、電話・音楽プレーヤー・インターネットを一つに掛け合わせることで世界を変えたと言われます。同じように、AIとプログラミング、そして自社が積み重ねてきた知識や強みを掛け合わせれば、小さな事業者にも大きな可能性が生まれる——今回の挑戦を通じて、私はそう実感しました。
おわりに
当事務所では、許認可の手続きだけでなく、こうした業務効率化の取り組みにも力を入れていきたいと考えています。「うちの紙の作業も、なんとか自動化できないだろうか」とお考えの事業者の方がいらっしゃれば、どうぞお気軽にご相談ください。同じようにAI活用に挑戦されている方との情報交換も大歓迎です。
一つひとつの業務効率化が積み重なれば、地域の小さな事業者の成長も加速し、より良い社会へとつながっていく——私はそう信じています。
サイトウ行政書士事務所 齋藤丈威


